正直、どいつもこいつもつまらない。お洒落と持て囃されたあの子は海外に飛び立ち 可愛いと言われていたあの子はダンス部に入り 学級員長だったあの子は慶應に行った 絵が上手かったあの子は美大へ行き お嬢様のあの子は音大に行った 家庭が複雑で友達が少なかったあの子高校でホストにハマって風俗嬢になり クラスで人気者だったお目目がぱっちりしていて短いスカートからのぞく健康的な脚が印象的なあの子はヘルパーさんになった 学年で1番モテたあの子は暗いことばかりを呟くようになった いつも丸い眼鏡をかけて真面目に勉強をしていたあの子がとても格好良くなった 

 

何人が、この中で何人がわたしのことわかるの だれがわたしを分かってくれるの 日付をまたぐ 0:25の数字をiPhoneが照らす そのあかるさに目が慣れた 人工的な目に嫌気がさして iPhoneをとじる

 

月と星 へやの中いっぱいに もうしわけなさそうに ふりそそぐ 海のなかみたいになる 壁はやさしい青にそまる  空気のながれがとまったようになる 頬のしたにおいた 手 まだ若いわたしを証明するかのように それはしっとりとしていた 細やかで繊細な ヒフのひとつひとつ 細胞のひとつひとつが そっと目を閉じるように 静かになる 

 

だれがわかってくれるの

だれかわかってくれるの

だれもわかってくれない

 

何も起きない単調な毎日は少しずつわたしの心をしゃくしゃくと音を立てて蝕んでゆくね 

 

気がついたときにはもうおそくて  振りかえれば さっきの虫が かわいい顔をして ほほ笑んでいる それはそれは やさしい顔でほほ笑んでいる わたしはそれから逃げる 走って逃げる 逃げても逃げても あのかわいい顔が忘れられないね                  ないちゃうね