私があの頃に思考した事を 忘れたり 馬鹿にしたりするけれど それは私の血肉になっている 大人になる という事は 本当に良いことなのだろうか 今日もつまらないおとなになってしまってますよ と いつも電話越しに言っていたあの お兄さんは ほんとうにつまらないおとなになってはいないだろうか 枯れて死んだドライフラワーのような 飾りたくなる 空虚感と背徳感 孤独感 からくる ワインで何日も何日も煮込まれた肉のような 生々しい美しさを纒う大人 に なってしまっていてほしい 煮込まれてるのに 草食ですよ と諦めたように笑う その中に 目を背けたくなるような それでいて 脳裏に焼き付く 小さいけれど あまりにも重い肉を煮込んでいるのを 私は見てしまったから その肉を食べてみたいと思ってしまう

熟成 ワインが血のよう 肉が臓器のよう

神様が作ってくれた 人間 という身体のなかに潜む ひとつひとつの臓器を手にとって どろどろ と流れ出す 血液を 飲んで 共喰いしている人間が 平気な顔をして 通勤電車に乗っているから 私は東京が好きなのです。