ねぇ 何にもないね

 

本当に何もないのだろうか 心の温かくてやわらかいものを 何もない が毟る 毟る きっと何かがあるから毟るという現象が起こる 私という肉体は残るけれど 私の精神が蝕まれてゆくね 何かをしても 何もしなくても 何かがそこに存在してしまっている この世に 無 はあるのだろうか苦しみを味わっている人は 有る を食べようとし 苦しみの限界を超えた人は 無 を食べようとする 時間をかけて 何十年かけたって食べようとする もしかしたら食べているのかもしれない だとしたらこの世に 無 は存在することになる 海に飛び込める高い高い崖があるように思えて助かる でもそれは 思える のであるからやっぱり存在しないのかもしれない そう思うとわけがわからないまま今すぐ踊り狂いながら骨になって死ねる気がしてくる 無 がないという事が 本当に無 それを証明したくない 有る無 は生々しく残酷だけれど 無い無 は 感触がなければ残酷でもなく 本当にそこには何もなく 言葉も肉体も精神もない ということすらもない

 

この世は

 

と君が口から出した世界が 隣の人と似ていて それは 店員さんとも似ていて あの子ともあの人にも似ていて 刺し殺したくなった 君が死体になればいい そう思うほど私が死体に近づいていくので 椅子が勃起してると思ってパンツを濡らすことに励むしかない それでも君の世界が私の世界を刺し殺してゆくので 私はトイレに行きマスターベーションをする 濡れてるところに異常に冷たい人差し指が触れる度に 乾き 痛く 代わりに頰が濡れるので 無理矢理 便器の中に 嘔吐する 美学など要らない 口の中から苦い体液が流れ出てる中でそう呟く それなのに 吐けば吐くほど 狂いそうになる中で美学を求めている 求めれば求めるほど深くの谷に飛んでゆく 羽衣の切れ端がまるで生き物のように宙を優雅に舞っている